テクニクスSP-10MK3、ヤマハGT-2000、GT-2000X

　MKⅡのイメージを残し、また、MKⅡのキャビネットにそのまま取り付けられるように設計されているが、内容は全くの別物といってよい。
　コントロールユニット６kg、本体18ｋｇとヘビー級（MKⅡでは、3.8ｋｇ、9.5ｋｇ）。
　ターンテーブルはアルミダイキャストと銅合金の二重構造、ローター一体型で重量10kg、慣性モーメント1100kg・ｃ㎡とすごいもの。起動トルクは16kg・ｃｍで民生用としては世界最高である。
　これまでSP10MKⅡつきで使っていた自作プレイヤーのキャビネットとアームはそのままで本機に交換、つまり筆者のレファレンスに納まったわけだが、音はどう変わったか？一言で言えば、「オーディオが消えうせて、生の人間と楽器がそこに踊り出た」という感じである。鮮烈の極致。強烈な実在感というか、実態感というか、あまりの生々しさに目下大いに当惑している。目のやり場に困るのである。筆者宅の音というのは本来生々しさが身上で、初めて聞いた人はたいていギョッとするのだが、今度は筆者がギョッとした。どうしても、目の前に人が立っているに違いないのである。気味が悪いというか、緊張で体が固くなるというか、金縛りにあったみたいに身動きできなくなる。しかも、視覚的にはアンプやスピーカーが並んでいるので違和感がひどく、目をあいていると頭がおかしくなる。二重ターンテーブル、慣性モーメントの大きいプレイヤーなら他にもあり、テストもしているが、こんな感じでなったプレイヤーはなかった。理屈はともかく凄いプレイヤーである。ただし、ウルトラマニア向き。レコードではワンポイント録音に絶大な威力を発揮、逆にマルチマイク、マルチトラック録音では仕掛けがすっかりわかってしまうのでドッチラケ。もっとも、種も仕掛けも知り尽くした上で楽しむという手もあるから、ドッチラケもまたいいかもしれないが。
　MKⅡに比べると25万円と高価だが、ハイCP機であることは間違いない。

　GT-2000から、1000、750とローコストモデルに移行していったヤマハ。CDで稼いでいるヤマハだから、もうＡDに見切りをつけたのかと思っていたら、どっこいアナログは死なずとばかり、久々に超高級プレイヤーを出してきた。実測重量33.5kgとヘビー級。キャビネットはウォルナット天然木鏡面仕上げで、見とれてしまうほど美しい。キャビネットといってもパーチクルボードの塊であり、6面どこを叩いてもコチコチ、まるで石みたいだ。本体は25ミリ厚パーチクルボード5枚重ねプラスアルファで128ミリ厚、それに30ミリ厚パーチクルボードの底板がつく。底板を取り付けているネジの太さと長さに驚く。パーチクルボードは１枚ずつ切り抜きが違うので、内部構造は３次元迷路的、デットベースにもフェルトがしっかり詰め込んであるので、空洞共振を抑え、キャビネット全体のダンプにも一役買っているはずだ。
　ターンテーブルは５.４ｋｇ。ドライブモーターは新開発で、20ミリ径という特に太いシャフトを使っていることが特徴。外力にも強く、安定した回転を保証する。
　トーンアームは単売のストレートアームYSA-１がそのまま取り付けられている。
　フォノモーターの起動トルクは、2000と同じ２ｋｇ・ｃｍ、ＳＮ比も同じだが、ワウフラは2000の0.005％から0.0025％と向上している。消費電力も同じ。インジケーターを兼ねたフィンガーレストも同じ。このインジケーターからカートリッジへの不要輻射をチェックしてみたが全く問題はなかった。
　アームは黄銅製ストレートパイプのセミインテグレート・タイプでシェルは着脱可能だがシェルにリード線は無いし、接点も無い。アーム本体から出ているリード線の先端にチップがついてカートリッジに直結。この方式では頻繁なカートリッジ交換は無理。気に入ったカートリッジを長く使うようにしたい。
　音はカートリッジ次第だが、静かで重厚、かつ繊細な本物のサウンドが聴ける。音場も３次元的に広大、非常に安定した安心感のあるサウンドと音場だ。

　ヤマハとしては久しぶりのオーソドックスなマニュアル・プレイヤーの登場である。この価格帯では最大最重量級である。キャビネットは5層の積層パーチクルボードで、底板も25ミリ厚、ＮS－1000Mと同じブラック仕上げ、どこを叩いてもコチコチ、モーターカバーもダイキャストでコチコチである。ターンテーブルは374ミリ径、5.4kg。慣性モーメントは1200kg。ターンテーブル径がこれだけ大きいとレコードの着脱や、アームの操作に不便なのだが、そこは巧く考えられている。ターンテーブルは外周をU字溝で取り囲んで、実測294ミリ径のターンテーブルとして扱えるようになっている。
　モーターのスピンドルの先端はディスクに合わせて細くなっているが、ターンテーブルをはめ込む部分はテーパ－付きの太いもので13～14ミリ径あり、ターンテーブルをがっちり支えふらつきは少ない。
　アームは当然ロングタイプだが、組み立て式である。サポートはジンバルで高感度糸吊り式のインサイドフォースキャンセラーと、サポート周等は、旧YP-D51、D71のアームと同じだ。変わっているのは出力コードでなんと横からじかに引き出されている。コードも特に質の良いもの。音質優先設計だが、組み込むのにも非常に便利である。実測総重量27.5kg。
　このプレイヤーはキャビネットがウォルナット白木仕上げで、オートアップ付きの2000Lもあるが、どういうわけか安い2000の方がかえって高級感がある。やはり黒の威力か。
　以前、KP-800、QL-Y55Fのターンテーブルを33回転で回しておいて、電源を切ってから何秒で止まるかテストしたことがある。KP-800が16秒、QL-Y55Fが18秒だった。本機ではなんと53秒かかった。慣性モーメントの大きさがわかる。
　付属のシートに少し問題があること、ロングアームとしてはパイプの強度と鳴きの防止がもうひとつといったこともあるが、プレイヤー・トータルとしてみるとたいへんなハイCP機である。